暑い中、刺繍展に足を運んで頂きありがとうございました。

作品を通してご来場頂いた方とコミュニケーションができてとても楽しかったです。

初めての展示会ということもあり、友人、家族が駆けつけてくれて、とても励みになりました。

今回刺繍展を開催させて頂いたギャラリー「+BASE」は下町にある建築家のシェアオフィスで、自ら改修設計されたビルは斬新な発想が詰まった心地のよい空間です。

+BASEがある浅草橋や蔵前あたりは大通りから裏道に入ると落ち着いた古い街並みが残っていますが、その中に作家のアトリエやショップが入っていて面白そうな町です。

展示会場の正面はガラス張りになっており、そこに透け素材の作品を吊るす形で展示すると光が通って素材感や色味がよく映えて綺麗でした。

外からでもよく見えるので、通りすがりに足を止めて見てくださる方もいて、今回の刺繍展にぴったりの会場だったと思います。
それでは、またどこかで作品をご覧頂ける日を楽しみにしています。

最後までお読み頂きありがとうございました。
ここ約3年で制作した刺繍作品を12点展示いたします。
展示中は在廊しておりますので、是非遊びにきてください。
+BASE

▪️About me
かれこれ15年程前、趣味でリュビネル刺繍を習い始めました。

リュビネル刺繍とは、クロシェというかぎ針を使ってビーズやスパンコールを素早く縫い付けていく手法で、オートクチュール(高級仕立服)でよく用いられています。

出産を機に刺繍から遠ざかっていましたが、2020年頃、刺繍の依頼をきっかけに再開し、育児や家事の合間に制作しています。

刺繍の図案は作りながら考えることが多く、頭の中で思い浮かぶイメージは抽象的であったり具体的であったり様々です。

イメージを刺繍で表現する難しさに頭を抱え、最終的にイメージと違う図案になったりしますが、そんな制限のある中で表現する面白さも感じています。

本展で展示する12点の作品は、リュビネル刺繍を主として、様々な手法や素材を用いて制作しております。
先日ピアノの発表会に参加し、Jelly Roll Morton作曲「The Crave」と吉松隆作曲「さりげない前奏曲」を演奏しました。

「The Crave」を作曲したJelly Roll Mortonは1890年生まれで、Jazzの草分け的な存在だったようです。

この曲もノリノリな楽しい曲で、映画「海の上のピアニスト」のピアノバトルシーンでも使われています。

「さりげない前奏曲」は「The Crave」とは異なり、神秘的で繊細な雰囲気の曲です。

吉松隆さんは今年古希を迎えられた現役の作曲家で、独学で作曲されています。

この曲が面白いのは小節ごとに拍子記号が変わるところです↓

こんな癖強めの曲を、タイトルにあるように“さりげなく”演奏しないといけません。

なかなかやりがいのある曲です。

昨年の発表会では緊張のあまり演奏が止まってしまいましたが、今年は何とか最後まで止まらずに演奏できたので、それだけでも立派な成功体験になりました。

それではこの辺で。
最後までお読みいただきありがとうございました。

ふと頭に浮かんだイメージを刺繍にしてみました。

この刺繍をしていて、「美しい人体図鑑(コリン・ソルター著)」という本を思い出しました。

その図鑑には顕微鏡で撮影された人体の色んな細胞が載っています。

色彩豊かで多様な形状をした細胞で作られた人体は神秘的で美しい小宇宙のよう。

刺繍の図案としても参考になりそうです。
背景として、生成りの生地に焦茶色の絵具を塗りました。

帽子はフェルト生地を、リボンの部分はバイアステープを縫い付けました。

ピンは金糸で刺繍しています。

葉巻は立体的になるよう中を盛り、フラワーテープを被せました。葉巻の感じが出てるとよいのですが。

私が帽子と葉巻から連想するのはキューバです。

ドキュメンタリー映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の影響かもしれません。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブはアメリカのギタリスト、ライ・クーダーとキューバの老ミュージシャンで結成されたバンドです。

このバンドのピアニスト、ルベーン・ゴンザレスの演奏を初めて聴いた時、クラシックとは違う弾き方に衝撃を受けました。

曲によってピアノを打楽器的に弾いたり、旋律的に弾いたり、聴いていて飽きません。

身体に力みがないのに力強い。

歳を重ねたからこそ出せる音なのかもしれません。

映画の中で、子供たちが体操の練習をしている側でルベーンがピアノを弾いているシーンが好きです。
今年のピアノの発表会でナザレーのオデオンを弾きました。

ナザレーはブラジルのリオデジャネイロに生まれ、幼い頃からピアノ好きの母親やアマチュアのピアノ教師からクラシックピアノを教わっていたそうです。

14歳の時に初めて作った曲が出版され、それ以来ブラジル風タンゴと称される曲を多く作っています。

1910年頃から「シネマ・オデオン」という映画館のロビーで演奏しており、この映画館のために作曲されたのがオデオンです。

当時この映画館は上流階級の社交場で、ナザレーの演奏はたちまち大評判となり、観客は演奏を聴くために映画の開演時間より1時間も早くやってきたほどです。

オデオンはとても躍動感あふれるリズムで踊りたくなるような曲です。

当時オデオンを聴いていた人たちを想像して、刺繍にしてみました。

1900年代初頭のファッションのイメージで。
ただ、ナザレーは自分の音楽を踊りの伴奏ではなく、聴くための音楽として認められたかったそうなので、実際踊る人がいたのかいなかったのか…。

オデオンにはリズミカルな中に優雅なメロディが流れてきます。

ブラジル音楽に影響を受けつつも、こういった部分に幼い頃から抱いているショパンへの憧れが表れているのかもしれません。

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演奏動画を投稿しました
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横顔の刺繍をしてみました。

これは、以前美容室でカラーをしてもらっている間、たまたま手に取ったファッション雑誌に載っていた刺繍の写真からアイデアを得たものです。

その刺繍は、濃いめの水色の生地にピンク色の糸でチェーンステッチが施されていて、柄はどんなだったか覚えていませんが、生地と糸の色合いやチェーンステッチに惹かれました。

私もこういうの作ってみたい!と思い、まずは手芸用品店へ。

記憶したイメージと全く同じ色味の生地や糸はなかったので、近いものを購入しました。

どんな図案にしようか考えていて、線画のようなイメージが浮かんだので何となく描いてみたら女の横顔風になりました。

本当はピカソの線画のように描きたかったのだけど、上手くいかないので諦めました。
ピアノを再開して最初にレッスンを受けた曲がエリック・サティのジムノペディでした。

過去に弾いたことがあったので、手始めにやるにはちょうどよいかと。

私が好きな作曲家や演奏家は奇人、変人、異端児と言われる人が多いように思います(奇人が好きなわけではなく、奇人が生み出す音楽が好きなのです)。

エリック・サティもそのひとりです。

彼はパリ音楽院に入学するも、肌に合わず中退。

その後、パリのキャバレー「シャ・ノワール(黒猫)」でピアニストとして演奏していました。

このシャ・ノワールでもジムノペディを演奏していますが、会話の邪魔にならないような演奏を意識していたそうです。

晩年、「家具の音楽」という室内楽曲を作っていますが、サティは家具のようになんの違和感もなく存在する音楽を目指していたそうです。

個人的には、ジムノペディは雨の日に弾きたくなります。

雨音がとてもお似合いだと思います。

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演奏動画を投稿しました
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母からの依頼でトートバッグを作りました。

刺繍のテーマは特になく、自由帳にお絵描きする感じかもしれません。

刺繍をする前に刺繍枠に張った生地をじっと見ていると、生地を織る際にできたムラが見えてきます。

麻のように凹凸がある糸で織られた生地ほど表情があります。

刺繍上部は、そのムラを活かしてできた模様です。

右下の英文は、映画「ノマドランド」の台詞です。

One of the things I love most about this life is that there’s no final good-bye.
You know, I’ve met hundreds of people out here and they don’t ever say a final good-bye.
I always just say, I’ll see you down the road.
(ノマドのいいところは“さよなら“がないことだ。 
ここでたくさんの人と出会ってきたが、別れる時は決して“さよなら“と言わない。
いつも“またね“って言うんだ。)

とても美しい映画で、感動しました。

縫製はいつもプロに依頼してましたが、今回は自分で挑戦。

刺繍した生地を縫製するので、失敗できないプレッシャーと不慣れな段取りに神経を使いながら。。。

出来上がった時の達成感といったら‼︎